微妙なハンドなのにオールイン!?
Qちゃん
アリア、GTOを勉強してたらちょっと気になったものがあるんだけど。
アリア
どんな状況だったの?
Qちゃん
いつも勉強してるシチュエーション(6max, 100bb, NL50)なんだけど、UTG vs HJの3bet potで、フロップが 6h5s4d、potは14.5bb。UTGが4.8bb、つまり33%のドンクベットをして、HJが18bb、55%のレイズを返してきた場面。
アリア
確かにそのボードならドンクはありそう。それで何が気になったの?
Qちゃん
この時のHJのレイズって、QQ以上の強いオーバーペアがバリューの中心だったんだよ。こんな感じ。

Qちゃん
それに対してのUTGの反応を確認したら、なんかQQがオールインしてたんだよね…
確かにQQは強いハンドだけど、相手のバリューがAAとKKなんだからQQでさらにレイズオールインってなんか変な感じがして。ほらこれ。
確かにQQは強いハンドだけど、相手のバリューがAAとKKなんだからQQでさらにレイズオールインってなんか変な感じがして。ほらこれ。

アリア
なるほど。それはとても興味深いシチュエーションだね!実際にHJの55%レイズレンジのバリューレンジのメインはAAとKKで、QQから見るとかなり嫌な相手に見えるし、実際QQのエクイティは55%くらいしかないよ。だから普通に考えると、“そんなに強いレンジ相手にQQでオールインを返していいの?”って違和感が出るんだ。
Qちゃん
EQ55%って完全にマージナルハンドじゃん。
アリア
そう。でもGTO戦略では、QQはオールインすることがあるんだ。しかも、オールイン後のEQの関係を見るとすごく変な形になってるの。

Qちゃん
あれ、いつもオールインしてる側がポラライズしてるはずなのに、今はオールインしてるはずのUTGのEQが50%近くに集中してる。変なグラフだね。
アリア
でしょ。だから今回は、“なぜ中途半端なハンドでのオールインが許容されるのか”を、かなり単純化したゲームを使って解説していくよ。
単純化されたゲームで考えてみる
Qちゃん
どんなゲームにするの?
アリア
設定はすごく単純。このゲームではハンドもボードも一枚だけ。まずQちゃんがOOPでKを持ってる。そして私はIPでAを1コンボ、Qをコンボ持ってるよ。ハンドの強さはA>K>Qよ。
Qちゃん
つまり僕が中途半端なレンジ、アリアがポラライズされたレンジなんだね。
アリア
その解釈で大丈夫よ。そして、2人のスタックは1点ずつ。ポットも1点で、サイズは1点のオールインしかないよ。
Qちゃん
めちゃくちゃ単純だね。他に条件はあるの?
アリア
このゲームではターンとリバーの2回のアクションがあるの。リバーでは、一定の確率でQがボードに落ちて私のQがQちゃんのKを逆転し、そうじゃない場合は2が落ちて何も起きないわ。
Qちゃん
逆転要素があるんだね。つまり要約すると、OOPはマージナルハンドを持ってて、IPはナッツのAか、今は負けてるけど将来逆転できるQを持ってるって感じ?
アリア
そう。図にしたらこんな感じね。

アリア
今回考えたいのは、そのときにOOPが今オールインするべきか、チェックすべきかという問題。
Qちゃん
うーん、ちょっと難しいな。
アリア
じゃあ、こうなるようなシチュエーションを一つ用意するね。
: 7s3d2c8s
OOPの
ThTc(1)
IPのレンジ
AhAc(1コンボ)
KhQc(コンボ)
Qちゃん
つまりTTが僕のKを、AAがアリアのAを、KQがアリアのQを表してるんだね。
アリア
そう。このとき、KQがTTをまくる確率は14.3%。いわば“2オーバーで逆転する枠”として見ている。
Qちゃん
なるほどね。でもOOP側はIPのAAが怖いしいったんチェックかな?
アリア
そこがこの問題の面白いところなの。実際に計算すると、KQのコンボ数によって戦略が変わるのよ。具体的には、>3.18ならTTはオールイン、<3.18ならチェックになった。
Qちゃん
え!?オールインしたらAAに捕まるだけでKQには降りられる、最悪のベットにならない?
アリア
その気持ちはとってもわかるよ。だけど、色々な要素を加味すると、オールインが正解になることもあるって結論にたどり着けるはず。
Qちゃん
えー。ちっともわかんないや。
アリア
じゃあQちゃん。もしQちゃんがベットしなかったら私の番になるわけだけど、私はどういう行動を取ると思う?
Qちゃん
うーん、多分だけどポラライズしてベットかな?
アリア
その通り!IP側はナッツのAAとドローのKQを使ってTTを苦しめるようにオールインでポラライズするよ。だから、チェックしてもTTは苦しめられる運命なんだ。
Qちゃん
チェックしたからといってショーダウンまで行けるわけじゃないもんね。
アリア
そう。どっちのアクションがより利益的かは、bet EVとcheck EVを比較することでしか分からないからね。じゃあ次の章では実際に比較してみよう。
check EVは「今勝ってる」だけでは決まらない
アリア
ここでは、bet EVとcheck EVを比較して考えてみましょう。
まずbet EVから見ると、これは単純。AAが1コンボ、KQがコンボなら
の確率でAAにコールされて-1
の確率でKQを降ろして+1
以上から、bet EV=になる。
まずbet EVから見ると、これは単純。AAが1コンボ、KQがコンボなら
の確率でAAにコールされて-1
の確率でKQを降ろして+1
以上から、bet EV=になる。
Qちゃん
じゃあ問題はcheck EVの方?
アリア
そう。TTが“今は勝ってる”からといって、そのまま勝ちを回収できるわけじゃない。
チェックした場合にTTがEQを実現する(=ショーダウンでKQに勝利してポットを取る)ためには、
ターンでIPが諦めてチェックしてくれる
そのうえでリバーで逆転されない
この2つが必要になる。
チェックした場合にTTがEQを実現する(=ショーダウンでKQに勝利してポットを取る)ためには、
ターンでIPが諦めてチェックしてくれる
そのうえでリバーで逆転されない
この2つが必要になる。
Qちゃん
今勝ってても、未来でちゃんと逃げ切れないと意味ないのか。
アリア
その通り。しかもIPはKQを全部チェックに回すわけじゃない。KQの一部をターンのブラフオールインに使える。
Qちゃん
そこがめんどくさいんだ。
アリア
うん。TTのエクイティを奪うためには、AA1コンボに対してKQを0.636コンボ オールインすればいい。そうするとTTはコールとフォールドの際まで追い込まれてEVを0にされちゃうんだ。必要勝率33%から出る数だね。
Qちゃん
つまり、チェックするとKQにブラフの機会を与えちゃうんだね。
アリア
そう。その結果、check EVはIPがチェックバックする確率にリバーでKかQ以外のカードが出る確率をかけたものになる。IPがチェックバックする確率はIPがブラフに使うKQのコンボ数を考えれば求められるけど、ちょっと難しいから数学に自信がある人は計算してみてね。
アリア
ここでは計算過程を割愛して結論だけ言うと、
IPがチェックバックする確率=
リバーでKかQ以外のカードが出る確率
これを掛け算してcheck EV=となるわね。
IPがチェックバックする確率=
リバーでKかQ以外のカードが出る確率
これを掛け算してcheck EV=となるわね。
Qちゃん
めちゃくちゃ複雑な式だ…
アリア
この数式は完全に分からなくても大丈夫。今はbet EVとcheck EVを比べるって話だからね。この式の解釈は後でやるよ。
Qちゃん
そっか。じゃあとりあえずbet EVとcheck EVを比べてみよう。
アリア
そうだね。今回は=14.3%の仮定の下で、bet EVとcheck EVのどちらが大きくなるかを考えていくよ。これを計算するとこんな事実が出てきたわ。
>3.18 のとき bet EV > check EV
=3.18のとき bet EV = check EV
<3.18のとき bet EV < check EV
となるの。つまり、さっき言った>3.18ならTTはオールイン、<3.18ならチェックという戦略が正しくなるの。
>3.18 のとき bet EV > check EV
=3.18のとき bet EV = check EV
<3.18のとき bet EV < check EV
となるの。つまり、さっき言った>3.18ならTTはオールイン、<3.18ならチェックという戦略が正しくなるの。
Qちゃん
うーん直感と全然違うね。
アリア
その気持ちはわかるよ。とりあえずさっきまでの話を整理するとこういうことだよ。
TTのbetは、一見すると負けてるハンドのAAにペイオフして勝ってるハンドのKQは降ろすだけに見える。だから“勝ってるところを降ろしてるだけでは?”と感じる。
でも実際には、チェックするとKQはターンでブラフしてくるし、ブラフを諦めても一定確率でリバーで逆転してくる。それによってTTは本来持っている勝ち分をかなり削られてしまう。
TTのbetは、一見すると負けてるハンドのAAにペイオフして勝ってるハンドのKQは降ろすだけに見える。だから“勝ってるところを降ろしてるだけでは?”と感じる。
でも実際には、チェックするとKQはターンでブラフしてくるし、ブラフを諦めても一定確率でリバーで逆転してくる。それによってTTは本来持っている勝ち分をかなり削られてしまう。
Qちゃん
あー、つまりbetが強いというより、チェックが思ったより弱いのか。
アリア
まさにそういうことね。これは今のEQだけを見ていても分からない話で、そのエクイティがどれほど実現するかを考えなきゃいけないの。
Qちゃん
=3.18の時って、AAの3倍以上KQがいるってことだから…計算するとTTってこのときのEQは65%もあるんだね。
アリア
そう。ただし、EQがあることとそのEQを実現できることは違うってのが今回の重要なポイントだよ。
数式が意味していること
Qちゃん
さっきの式が難しすぎてふわっとしか理解できてないんだけど、さっきまでの数式はどう解釈したら良いの?
アリア
大きく2つポイントがあるよ。
1つ目は、が大きい=相手の弱いハンドの割合が多いほど、OOPはオールインしやすくなる。
これは分かりやすいね。相手の強いハンドの確率が低くて、KQを降ろすメリットを受けやすいの。
2つ目は、が大きい=相手の弱いハンドの逆転可能性が高いほど、OOPはオールインしやすくなる。つまり、相手の“今は負けてるけど将来かなり面倒なハンド”が強いほど、相手はブラフをしやすくなるし
1つ目は、が大きい=相手の弱いハンドの割合が多いほど、OOPはオールインしやすくなる。
これは分かりやすいね。相手の強いハンドの確率が低くて、KQを降ろすメリットを受けやすいの。
2つ目は、が大きい=相手の弱いハンドの逆転可能性が高いほど、OOPはオールインしやすくなる。つまり、相手の“今は負けてるけど将来かなり面倒なハンド”が強いほど、相手はブラフをしやすくなるし
Qちゃん
それは直感に合うかも。相手に強いハンドはちょっとだけあるけど、それ以上に捲られたりブラフで苦しめられるほうが嫌だからオールインしちゃおう!ってやつだね。
アリア
いい解釈だね。そしてこの帰結として面白いのは、EQが50%を下回っていてもこのオールインが成立する例があること。
Qちゃん
え!?現状負けててもオールインがあるの?
アリア
たとえば、 = 0.27の例を見てみよう。設定はこう。
ボード: 7s3d2c8s
OOPのレンジ
ThTc(1コンボ)
IPのレンジ
AhAc(1コンボ)
Ks9s, Ks5s(合計1.5コンボ、=27%)
Qちゃん
その時点でもうけっこう不思議なんだけど。相手のレンジの40%は最強ハンドなのにオールインって自滅行為でしょ…
アリア
実際にGTO戦略においては、TTはオールインする。そしてもっと不思議なのが、そのTTのEQが44%しかないこと。
Qちゃん
44%!?もう現状で負けてるじゃん。
アリア
それでもオールインが正解になる。これが今回のいちばん直感に反するところだと思う。
Qちゃん
なんでそんなことが起きるの?
アリア
理由は同じ。bet EVが高いからじゃなくて、check EVがすごく低いから。こっちがチェックすると、相手はターンでブラフしてくるし、リバーで逆転もしてくる。つまり、こちらの“今持っている44%のEQ”は、チェックしてもそのまま44%は実現できない。
Qちゃん
だから“負けているからオールインできない”って単純な話じゃないんだ。
アリア
そう。大事なのは今のEQよりも、そのEQをどれだけ実現できるかなんだよね。
まとめ
Qちゃん
じゃあ今回の結論は?
アリア
一言で言うなら、
ということね。IPがナッツ級を含みつつ、今は負けているけどある程度のEQがあるハンドも多く含むようなpolarレンジを持っているとき、OOPは“ナッツに当たったらある程度仕方ない”と割り切って、相手のドロー群の捲り目とブラフの機会を放棄させるためにオールインすることがあるんだ。IPがポラーレンジを持っているからといって、OOPで必ずしもするのが正解ではない
Qちゃん
勝ってるところを降ろすのもったいないって思うけど、放っておくとそれらからEQを奪われちゃうから降ろしておくってことね。
アリア
そう。その感覚を持てると、GTOによる一見変なオールインもかなり理解しやすくなるよ。
Qちゃん
これって実戦だと、どこで役立ちそう?
アリア
典型的なのは、SPRが小さくて、相手がpolarレンジを持っている場面。特に分かりやすいのは、4bet pot call後の戦略だと思う。
Qちゃん
あー、SBでTTとかJJを3betした後4betにcallして、ローボードが落ちた後とか?
アリア
そう。ああいう場面って、“中くらいに強いけど、受けに回ると苦しいハンド”をどう扱うかがすごく難しい。でも今回の考え方があると、ただチェックして受けるだけじゃなくて、オールインを返すって選択肢を持てるとプレーの幅が広がるわね。
Qちゃん
分かった、実践してみる!教えてくれてありがとう!



